骨盤ベルトというと、「広がった骨盤をギュッと締めて、元の位置に戻す道具」というイメージで紹介されることが多いかもしれません。ですが実際には、骨そのものの形を変える道具ではなく、痛みが出やすい場面を少しラクにするための補助具に近い存在です。
当院では、ベルトは太ももの外側の出っ張り(=大転子/だいてんし)あたりの高さで水平に巻き、必要な場面にしぼって短時間だけ使うことを基本にしています。そして本当に変えていきたいのは、ベルトの有無ではなく、呼吸・体幹・足裏・股関節といった「体の使い方」のほうだと考えています。
※ つけっぱなしにすると、かえって体がサボってしまうことがあります。「ここだけ助けてほしい」という場面を決めて使うイメージが安全です。
ご相談で多いのは、腰やお尻、恥骨まわりの痛みを少しでも軽くしたいという思いです。立ち仕事や歩行、赤ちゃんの抱っこなどで感じる「ぐらぐらする感じ」を、ベルトで抑えたいという声もよく聞きます。
産後の方だと、「骨盤が広がった気がする」「今のうちに戻したい」といった見た目の不安も重なります。その結果、「毎日きちんと巻いていれば、そのうち治るのでは?」とベルトだけに“治療効果”を期待しすぎてしまうことも少なくありません。
研究のまとめとしては、骨盤ベルトは痛みが出やすい動作の最中を助けることには一定の意味がありますが、単独で根本的に治すところまでは届きにくいとされています。ここを知っておくと、「思ったほど変わらない…」と落ち込む必要もなくなります。
まずは巻く高さです。立った状態で太ももの横の出っ張り(大転子)に手を当て、その高さとベルトのラインがだいたい揃っているかをチェックしてみてください。ウエスト寄りに上がってしまうと、いわゆる「腰巻き」になり、反り腰を助長しやすくなります。
つぎに締め具合。お腹側からベルトの内側に指が1〜2本入るくらいが目安です。呼吸が浅くなるほどきつい締め付けは、かえって肋骨やお腹の動きを止めてしまいます。
最後につける時間です。家事・抱っこ・立ち仕事・長めの外出など、「この動きがつらい」というシーンの直前〜動作中だけ使い、落ち着いたらいったん外す、というサイクルが理想です。「なんとなく一日中つけっぱなし」は、筋肉がサボる方向に働きやすいのでおすすめしていません。
ベルトをつけると安心して、つい胸をぐっと張り、反り腰で固めてしまうことがあります。一見姿勢が良くなったように見えますが、腰そのものの負担は増えがちです。ベルトの有無にかかわらず、まずは息を吐いて肋骨を少し下げること、そして足裏の三点支持と股関節からたたむ動きをそっと合わせていくことが、結局いちばんの近道になります。
産後の「見た目」が気になる場合も、骨の形を直接変えるというより、呼吸や体幹・股関節の使い方が整った結果として、立ち方・歩き方・ラインが変わる、というイメージの方が現実的です。ベルトは、その変化を感じやすくする“目安”くらいにとらえていただくと、ちょうどよい距離感になります。
Q. ベルトさえ巻いていれば、そのうち治りますか?
A.
ベルトは痛みが出やすい場面を一時的に楽にする道具であって、それ自体に「治療効果」があるわけではありません。大切なのは、ベルトの助けを借りながら、呼気・体幹・足裏・股関節といった体の使い方を少しずつ覚えていくことです。
Q. 1日のうち、どのくらいの時間つければいいですか?
A.
目安としては、家事や抱っこ、立ち仕事、長めの移動など、「ここがつらい」と感じる場面の直前〜その最中です。それ以外の時間はできるだけ外し、「ベルトなしでどこまで保てるか」を確かめる時間にしていくと、卒業に近づいていきます。
めがね先生の整体院では、骨盤ベルトの有無に関わらず、まず呼気と肋骨の動き・軽い腹圧・足裏の三点支持・股関節ヒンジ・重心の移り方をいっしょに確認します。そのうえで短時間のソフト調整で全身のこわばりをゆるめ、「腰だけで支える」状態からお尻×体幹で受けられる状態へ近づけていきます。
ベルトの高さや締め具合も実際に確認し、「どの場面で使うと楽か」「どこまで外しておけそうか」を相談しながら、道具に頼りきりにならない使い方を一緒に探っていきます。ご自宅で続けやすいホームワークもお伝えしますので、「いつかベルトを卒業したい」という方はご相談ください。
こうした場合は、骨盤ベルトの工夫よりも、まず医療機関での評価を優先してください。
骨盤ベルトは、痛い場面の一時的な軽減と、動きのフォームをつくるときの目安としては心強い味方です。ただし主役はあくまでご自身の体の使い方であり、ベルトはそれを後押しするサブ的な存在です。
「頼り続けるベルト」ではなく、いずれ卒業するためのベルトとして付き合っていきたい方は、短時間のソフト調整+脱力×連動のトレーニングで、その準備を一緒に進めていきましょう。