重い物を持ち上げた瞬間や、何気ない動きで「ピキッ」と腰に走る痛みが出て、その場から動けなくなる。それが一般的に言われるぎっくり腰(急性腰痛)です。痛みが強い当日は、「とにかく何かしなきゃ」と焦るよりも、まずは炎症をいたわりつつ、痛みを強めない動き方に切り替えることが大切になります。
ここでは、当日に避けておきたい代表的な動きと、代わりに選びたい安全な動き方について、できるだけ具体的に整理していきます。
まず避けたいのは、痛みの出ている腰をさらに刺激してしまうような動きです。代表的なものの一つがいきなり深く前屈するストレッチです。靴下を無理に履こうとして、痛みをこらえながら指先まで手を伸ばすような動きは、炎症が強い時期にはかえって痛みを増やしやすくなります。本格的なストレッチは、可動域が少し戻ってからで十分で、当日は「小さく慣らす」くらいにとどめておいた方が安全です。
次に注意したいのが、ひねりながら物を持ち上げる動きです。床に置いた物を片手でひょいと持ち上げながら、同時に上半身だけをねじるような動きは、「前屈」と「捻り」という負担のかかる組み合わせになりやすく、ぎっくり腰直後には特に避けたいパターンです。できるだけ体の正面・近い位置で物を扱い、腰をねじらないようにした方が安全です。
もうひとつの落とし穴が、ずっと同じ姿勢のまま動かないことです。「安静に」と言われると、丸一日横になりたくなるかもしれませんが、まったく動かさないでいると、筋肉や関節のこわばりがかえって強くなり、動き出しの痛みが増してしまうことがあります。痛みが許す範囲で、短時間ごとに体位を少し変えたり、ほんの数歩だけ歩いたりといった小さな動きを挟んでいくことが、回復の助けになることも少なくありません。
ぎっくり腰になると、痛みをこらえるために全身が無意識にこわばり、息を止めがちになります。そこで、まずは動く前に「呼吸でブレーキをかける」ことから始めます。口をすぼめて3〜5秒かけてゆっくり吐き、胸を大きく張り直さずに、肋骨がほんの少しだけ下がる位置で止めてみてください。
痛みが出やすい動きは、この吐くタイミングに合わせて小さく行うのがポイントです。勢いをつけて一気に動かすのではなく、「吐きながらゆっくり」「痛みが高まる手前で止める」を合図にしておくことで、必要以上に痛みを強めずに済むことが多くなります。
ベッドや布団から起き上がるときは、腰だけをひねりながら起き上がるのではなく、いわゆる「ログロール」と呼ばれる方法を使います。いったん横向きになり、両膝を軽く曲げた状態で、上半身と脚をひとかたまりの「木の丸太」のように一緒に転がすように動かします。
ベッドの端まで転がったら、下になっている腕でベッドを押し、その動きと同時に脚をゆっくり床に下ろしていきます。こうすることで、腰だけをひねることなく、体全体をまとめて動かすことができるため、痛みを悪化させにくくなります。
物を拾ったり、洗面台に前かがみになるときも、腰の一点だけを折り曲げるのではなく、股関節で体をたたむ意識に変えてみます。お尻を少し後ろに引き、背中を丸めずに、股関節から体を折りたたむようにして前かがみになります。いわゆる「ヒンジ」の動きです。
そのうえで、物はできるだけ体の正面・近い位置に寄せてから扱い、両手で「面」で受け止めるようにします。持ち上げるときは、片脚を半歩前に出したスプリットスタンスをとり、ここでも息を吐きながら小さく動かすことで、腰の一点にかかる負担を減らしていきます。
いまの動き方をざっくり見るために、次の3つを試してみてください。
どれか一つでも「さっきよりマシかも」と感じられたなら、その方向があなたの体にとって安全側になっている可能性があります。完璧を目指すより、「その方向に少し寄せていく」くらいの気持ちで十分です。
当日から数日にかけては、冷やす・座る・歩くといった場面でも、少しだけ工夫ができます。熱感や腫れ感が強い場合は、まず短時間の冷却(保冷剤や氷嚢をタオル越しに)で様子を見ると良いことがあります。ただし、冷やしすぎや長時間の連続使用は避け、様子を見ながら行ってください。
座るときは、浅く腰掛けて前かがみになるよりも、椅子の奥まで腰を入れ、背もたれに骨盤を当てるようにして座るほうが腰への負担は少なくなります。足裏は母指球・小指球・かかとの三点で床を感じるようにし、同じ姿勢を長時間続けないことが大切です。
歩行については、「たくさん歩いて治そう」と無理をする必要はありませんが、痛みが許す範囲で短い距離を小またで歩き、痛みが上がる前にいったん休む、を繰り返すほうが、まったく動かないよりも回復につながる場合があります。
これらに当てはまるときは、自己判断で様子を見るより、まずは医療機関での評価を優先してください。
Q. 完全安静が一番いいですか?
A.
ずっと寝たきりの状態は、一見「安静」に思えても、実際には筋肉や関節のこわばりを強めてしまうことがあります。痛みが許す範囲で、小さく体位を変えたり、短時間だけ歩いたりすることが、むしろ回復を助けることも多いです。
Q. ストレッチはしても大丈夫でしょうか?
A.
ぎっくり腰の当日は、深い前屈や反動をつけたストレッチは避けた方が無難です。まずは吐きながら小さく動かし、痛み手前で止める程度にとどめておき、痛みが落ち着いてきてから少しずつ範囲を広げていくのがおすすめです。
めがね先生の整体院では、ぎっくり腰を単に「腰だけの問題」とは捉えず、まず短時間のソフトな調整で、腰まわりだけでなく、肋骨・骨盤・股関節・お尻・体幹のこわばりをやわらげるところから始めます。そのうえで、呼気と肋骨の使い方、足裏の三点支持、股関節でたたむヒンジ動作、起き上がりのログロールなどを、一緒に確認していきます。
いわゆる「ボキボキした矯正」ではなく、時間をかけて“腰で受ける→全身で受ける”使い方に上書きしていくことを重視しています。実際の日常生活でどう応用するか(布団からの起き上がり、洗面、荷物の持ち上げなど)まで落とし込み、ご自宅で続けやすいホームワークも必要に応じてお渡しします。
ぎっくり腰の当日は、むやみにストレッチをしたり、我慢して普段どおり動こうとするよりも、深い前屈・捻りながらの持ち上げ・同じ姿勢の続けすぎを避け、呼吸→ログロール→股関節ヒンジといった、安全側の動き方に切り替えることが近道になります。
一人では加減が分かりにくい方や、「また再発するのでは」と不安が強い方は、短時間のソフト調整+脱力×連動のトレーニングで、実生活に合わせた動き方を一緒に整えていきましょう。当院をご利用ください。