皇法医学とは
皇法医学は、東洋医学の経絡と「気・血・水」を手がかりに、からだを全体のつながりとして読み解く考え方です。局所だけでなく、姿勢・呼吸・重心・手足の配分や連動の整合性に注目します。
皇法医学の視点:3つのキーワード
1)経絡 ― つながりの地図
経絡は、からだ全体を縦横に結ぶ「通り道」の概念です。局所ではなく、どこで力みや偏りが生じ、どこへ波及するかを俯瞰するための地図として扱います。
2)気・血・水 ― 調和をみる物差し
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気:
からだを動かし温め守るなどの「はたらき」の総称。機能面のエネルギー像として捉えます。
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血:
血液そのものと、その栄養・滋潤・精神安定に関わる側面を含む概念。からだを養い、潤す基盤とされます。
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水:
汗・涙・唾・関節液など体内の各種体液の総称。潤いと潤滑、代謝の流れを支えると考えます。
3)全体性 ― 動きとしての整合性
立つ・歩く・持つ・振るなどの動作が、呼吸・姿勢・重心・連動として一貫しているかを観ます。部分に焦点を当てつつも、常に全体へ戻すのが特徴です。
連動の途切れが起きると、どこかの過剰な働きで補う代償が増えやすくなります。
経絡図
経絡図は、からだを局所ではなく全体の通り道として俯瞰するための“地図”です。
当院での活かし方(見立て → 指導の流れ)
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観察:立位・歩行・上肢下肢の基本動作で、力み/偏り/代償の傾向を把握。
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見立て:経絡の連続性を手掛かりに、どのラインで整合性が崩れるかを仮説化。
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整理:呼吸・骨盤帯・胸郭・肩甲帯など、基幹の配分を整える練習に落とし込む。
連動の再構成と代償の低減をねらいます。
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再現:日常や競技の具体場面へ置き換え、再現しやすい反復で定着を図る。
用語ミニ解説
- 経絡(けいらく)
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全身をつなぐ通り道の概念。局所と全体の関係性を捉えるためのフレーム。
- 気・血・水
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活動の原動力・めぐり・潤いの3観点。バランスの偏りを言語化するのに用いる。
- 連動
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手足の動きが、体幹や呼吸と自然に噛み合い、無理なく伝わる状態。
- 代償
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ある部分の過剰な働きで他を補うこと。短期的には便利でも、長期の質を下げやすい。
よくある誤解(当院の考え方)
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「局所だけ整えれば十分」…
全体の配分が崩れていれば、すぐ元に戻りやすいと考えます。
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「正しいフォームは一つだけ」…
体格・経験・目的により“最適”は人それぞれです。
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「強い刺激ほど効く」…
大切なのは適切な箇所に、目的に合った“適切な圧”です。圧は量だけでなく、位置・方向・タイミング・持続の整合性で働きが変わると考えます。
Q&A
Q. 皇法医学を一言で言うと?
A.
「からだをつながりとして見る考え方」です。経絡=つながりの地図、気・血・水=配分の物差し、という理解で使います。
Q. どんな場面で参照しますか?
A.
立つ/歩く/持つ/振るなどの基本動作を観察するときの見立てのフレームとして参照します。局所ではなく全体の整合性を確認するためです。
Q. 当院の他ページとどう関係しますか?
A.
「当院の整体理念」や「体の使い方」に関する各ページの背景理論のひとつであり、
姿勢・呼吸・重心・連動を整理していくための“橋渡し”となる内容です。
Q. どんな人におすすめですか?
A.
「部分の不調が局所でも、結局は全体の使い方が影響する」と感じている方、動作の質を上げたい方に、理解の手がかりになります。
八光流柔術と皇法医学
皇法医学の習得には、八光流柔術の稽古が前提とされます。
理由は明快で、患者さんの身体のつながりに働きかけるには、精密かつ繊細なコントロール能力が必須だからです。
なぜ柔術の稽古が必要か(要点)
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つながりを感知する力:
相手の緊張・脱力・重心移動のわずかな変化を手足・体幹で捉える感覚を養います。
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最小で最大の原理:
腕力ではなく、リラックスを保ったまま「位置・方向・タイミング」で働きを通す稽古により、力みを使わずに全身の連動を引き出す要領を学びます。
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実戦的フィードバック:
強張って向かってくる相手(柔術の場面)に対し、無理なく制する過程で、ラインが通れば容易にコントロールできるという事実を体感し続けます。
臨床への橋渡し
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強張り=過剰な緊張として現れるパターンを見抜き、全身のつながりで解ける方向へ誘導する視点を持つ。
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重心と方向づけを整えることで、局所ではなく全体の整合性(連動)を回復しやすくする。
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腕力に頼らず自分の脱力を保つことで、相手(患者さん)のつながりが見え、コントロール(誘導)が容易になる。
※本ページは思想・用語・見立ての枠組みに関する紹介です。医療的な診断・治療が必要な場合は医療機関をご利用ください。
八光流に関する読みもの(ブログ)
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症状ページ(このページ)を補完する読みものです。必要な方だけご覧ください。
所縁
経絡にもとづく見立ての枠組みで知られる八光流 皇法医学の思想と、
古武術八光流柔術の「最小で最大」の原理を踏まえ、当院の身体教育(姿勢・呼吸・重心・連動)の整理に活かしています。
二代目宗家 奥山龍峰 先生のもとで修養を重ねました。
二代目宗家 奥山龍峰 先生
八光流柔術の稽古風景
書籍
動画